乳がんの検査について
- Q : マンモグラフィってなに?
- Q : マンモグラフィ撮影はどのくらい時間がかかりますか?
- Q : マンモグラフィ検査はいつ受けるのがベストですか?
- Q : マンモグラフィ撮影ではなぜ、乳房の圧迫が必要なのですか?
- Q : 放射線の被ばくによる危険はないのでしょうか?
- Q : 撮影の時に気をつけることはありますか?
- Q : マンモグラフィ検診で結果は異常なしでした。乳がんはマンモグラフィだけで発見できるのでしょうか?
- Q : マンモグラフィと超音波検査(エコー)はどちらがよいのでしょうか?
- Q : 検査の結果はいつ分かりますか?
- Q : しこりがどういうものなのかよくわからないので、自分で触ったことがありません。
自己検診をした方がいいですか? - Q : 自己検診や乳がん検診、つい忘れてしまいます。忘れないようにする方法はありますか?
- Q : 豊胸手術をしています。乳がん検診はできますか?
- Q : 妊娠中・授乳中でも乳がん検診はできますか?
- Q : がん検診で「精密検査を受けてください」と言われました。どのような検査をするのでしょうか?
乳房の症状について
- Q : 乳房にしこりを見つけました。乳がんでしょうか?
- Q : 胸にしこりができて、組織の検査をしたら線維腺腫と言われました。
これが乳がんに変わることはありますか? - Q : 乳房のしこりに気が付いて近くの病院に行きました。触診で「これは切ってみないと分からないので手術しましょう」と言われました。切らないと、がんかどうか診断できないのでしょうか?
- Q : 以前に乳房にしこりができて、切除したことがあります。結果は良性と言われましたが何か気をつけることはありますか?
- Q : 授乳中に胸のしこりに気づきました。お乳がたまっているのでしょうと言われましたが、だんだん大きくなってきたようです。どうすればよいでしょう。
- Q : 授乳中でもないのに、乳首から何か汁のようなものが出てきました。乳がんでしょうか?
- Q : 乳房が痛みます。炎症性乳がんではないかと心配です。
乳がんについて
- Q : 乳がんになりやすい人は?
- Q : 家族や親せきに乳がんの人がいなければ、乳がんの心配はないのでしょうか?
- Q :母と姉が乳がんになりました。遺伝性乳がんが心配です。検診はどのようにすればいいのでしょうか?
- Q : 乳がんは閉経したらならないのでしょうか?
- Q : 乳房が大きいと乳がんになる危険が高いのでしょうか。
- Q : 乳がんは痛くないと聞きましたが、本当ですか?
- Q : たくさん子供がいて、全員に授乳をしました。家族にも乳がんがいないし、乳がんにならないと安心しています。
- Q : 自己検診を毎月1回していたら、乳がんは必ず治る時期に見つかるのでしょうか?
- Q : 乳がんはしこりとして手に触れるようになるまで発見できないのでしょうか?
- Q : 男性でも乳がんになりますか?
- Q : 乳腺症の人はがんになりやすいのでしょうか?
- Q : ピル(経口避妊薬)やホルモン補充療法(HRT)は安全なのでしょうか?
- Q : 乳がんで亡くなる方が増えていると聞きました。乳がんは治療しても治らないのですか?
- マンモグラフィってなに?
-
乳房のX線検査のことです。
乳房は柔らかい組織でできているため、撮影に適した専用のレントゲン装置を使います。通常の検査では、一方の乳房に2方向、合計4枚撮影します。乳房の中の病変を見落とすことのないように研究考案された撮影方法で、広く先進諸国で取り入れられており、安全性が確立しています。 - マンモグラフィ撮影はどのくらい時間がかかりますか?
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ポジショニングから撮影まで含めて10分程度です。
- マンモグラフィ検査はいつ受けるのがベストですか?
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マンモグラフィ検査を受ける際は、生理前に乳房が強く張る方は、生理終了後から1週間頃が比較的痛みが少なく検査が行えます。力を抜いて緊張を解いて受けていただくことで、痛みもなく、観察に優れたよい撮影もできます。どうぞリラックスして受けてください。
皆さんのご理解とご協力が良い撮影、すなわち乳がんの早期発見につながります。検査の内容を十分ご理解いただいて、撮影を受けられることをお勧めします。
不明な点がありましたら、どうぞ遠慮なくお気軽にお尋ねください。 - マンモグラフィ撮影ではなぜ、乳房の圧迫が必要なのですか?
-
乳房は立体的で厚みもあり、そのまま撮影すると乳腺や脂肪、血管などの重なりのために、実際に腫瘍があっても写し出されないことがあります。そのため乳房の圧迫が必要になります。
また、十分な診断に必要な良い写真を撮るためには、乳房をなるべく均等に圧迫して撮影することがとても重要になります。乳房を薄く引き延ばして撮影をすることで、放射線の被ばく量を少なくする効果もあります。効果的な圧迫と正しい撮影をするために、乳房撮影専門の女性技師がポジショニング(撮影機械に乳房を挟んで、圧迫し体位をとる)を行います。十分に圧迫された条件のよい写真は、被ばく量を減らし、手にも触れない乳房のわずかな変化を写し出すことができます。診断に役立つ良い撮影を行うための重要な作業ですので、どうぞご理解とご協力をお願いいたします。
- 放射線の被ばくによる危険はないのでしょうか?
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マンモグラフィはX線検査ですので放射線被ばくがありますが、乳房だけの部分的なものです。骨髄への影響はなく白血病などの発生の危険はありません。
1回の乳房撮影で乳房が受ける放射線の量は、東京からニューヨークへ飛行機で行くときに浴びる自然放射線(宇宙線)とほぼ同じです。マンモグラフィ撮影による被ばく量はほとんど無害と考えていいレベルのもので、撮影によって早期乳がんを見つけることができるというメリットの方がはるかに大きいと言えます。
- 撮影の時に気をつけることはありますか?
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食事の制限や前もって服用するお薬などはありません。制汗剤やパウダーなどは良くふき取ってください。撮影の範囲は乳房からわきの下を含めた部分になります。パウダーなどは、がんのサインである石灰化に非常に似て写ることがあります。不要な再検査や必要以上の被ばくを避けるためにもご注意ください。
以前に受けた手術や傷跡、いぼ、ほくろなど、またご自分で気が付かれたしこりなどありましたら、その場所を撮影技師にお伝えください。この情報が、質の良い撮影と診断に非常に役立ちます。
- マンモグラフィ検診で結果は異常なしでした。乳がんはマンモグラフィだけで発見できるのでしょうか?
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マンモグラフィのみの検査では、約10~15%のがんが見落とされると言われています。
だからといってマンモグラフィをやる意味がないのではありません。マンモグラフィでは、手で触っても分からない非常に早期のがんを発見することができます。ですから、自己検診とマンモグラフィや超音波検査をうまく組合せることが、見逃されるがんを0%にするポイントなのです。どれかひとつだけで大丈夫ということはありません。 - マンモグラフィと超音波検査(エコー)はどちらがよいのでしょうか?
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マンモグラフィと超音波検査は乳房の検査では一般的なものであり、特殊な場合を除けばほとんどの乳房の病変評価がこの検査でできるようになりました。それぞれ特徴があり、両者が必要な場合もありますし、片方だけで診断に足る場合もあります。
マンモグラフィは、がんの初期症状の1つである石灰化を写し出すことができます。超音波検査は、数ミリの手に触れないしこりを見つけだすことができます。このようにそれぞれの検査の特性を生かして、必要に応じて両方の検査を組み合わせて行うことが大切です。
マンモグラフィは、石灰化という乳房の中のごく小さな石のようなものを鮮明に写し出すことができ、この石灰化が早期乳がんの唯一のサインとして、乳がんの発見に大変役立ちます。また石灰化以外にも乳腺の全体像を写し出すことから、左右を比べることで、わずかな乳腺の変化をとらえることができます。適正な機器と方法で撮影されていれば、前回の撮影との比較が客観的にできるため、検診に適していると言われています。
超音波検査は、超音波という耳には聞こえない音を機械から発し、臓器に音を当てて返ってくる反射の様子を画像にしています。ヤッホーというあのやまびこ(エコー)と同じ原理なので、超音波検査のことをエコーと呼ぶこともあります。超音波は痛みや放射線被ばくがありません。機械を直接乳房にあてて、断面像を画面に写し出し、この画像を見ながら診断を行います。放射線被ばくを避けたい妊婦の方や、若年の方、また乳房に痛みや炎症があり圧迫に耐えられない方、頻回に検査をする必要のある方は、マンモグラフィより超音波が適しています。
特に、大変小さなしこりについては超音波検査の方がよく検出される傾向にありますが、石灰化についてはマンモグラフィに及ばず、また検査しているときに異常に気づかれなければ、あとで写真を見直しても異常が見つかることはほとんどありません。また、前回との比較をする場合も同じ病変を見ているかどうか疑問があるなど、やや客観性に欠けているため検診への導入が遅れていますが、現在超音波の能力を最大限利用してマンモグラフィと組み合わせることで、検診の効果を挙げる工夫もされています。
- 検査の結果はいつ分かりますか?
- 結果のご説明は検査後まもなくお伝えいたします。
当クリニックではデジタルマンモグラフィ、デジタル超音波装置を導入し、画像はすべてデータとして管理されています。撮影直後にマンモグラフィ画像は診察室のモニタ画面で診断することができます。診察室ではモニタでご自身の画像をごらんいただきながら、乳房の状態をご説明いたします。 - しこりがどういうものなのかよくわからないので、自分で触ったことがありません。
自己検診をした方がいいですか? -
自己検診はしこりが何かを診断するために行うのではなく、乳房の様子がいつもと変わりないかどうかをチェックするために行います。
あなたの乳房は毎日変化しています。自分の乳房に関心をもって、ブレストウォッチャーになってください。クリニックでの定期的な検診(画像検査と触診)、そしてあなた自身の毎月のチェックがあって初めて早期発見ができるのです。しこりが何か分からないのは皆同じです。でも、「前と違う何かがある」と分かるのはあなただけです。この何かの異変に気づいたら、その先あれこれ悩むのは病院にお任せしてしまいましょう。
早期発見のきっかけを作るのはあなた自身であることを忘れないでください。 - 自己検診や乳がん検診、つい忘れてしまいます。忘れないようにする方法はありますか?
-
自己検診は、生理が始まって1週間後が比較的乳房も柔らかくしこりを見つけやすい時期ですので、これを目安にするといいでしょう。閉経後の方・生理のない方は、1日やお給料日など、毎月日を決めておくと忘れにくいでしょう。ブレストケアノートに検診の様子を毎月記入していくと習慣になり、また見直してコンディションを振り返ったり、検診のときにあなたのカルテとして持っていくこともできます。
1年に1回の医療機関での検診については、お誕生日や母の日、結婚記念日などとセットで時期を決めておけば忘れにくいでしょう。
- 豊胸手術をしています。乳がん検診はできますか?
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ご安心ください。問題なく行えます。
自治体の検診や一般の検診サービスでは、豊胸後の方は断られてしまうことも多くありますが、これは豊胸後の方には特殊な撮影技術と読影診断の経験が必要なためで、検査が行えないわけではありません。当院では、インプラント(豊胸バッグ)の挿入後の方でも、専用の特殊撮影法を用いることで安全にマンモグラフィを行うことができます。脂肪注入やヒアルロン酸注入後の方も、もちろん問題なく検査が可能です。安心してお任せください。 - 妊娠中・授乳中でも乳がん検診はできますか?
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妊娠中や授乳中は触診やマンモグラフィでは乳房の状態の把握が難しくなることが多いですが、超音波検査やMRIなどその他画像診断を必要に応じて組み合わせて診断を行うことが可能です。定期的な検診はもちろん、何か気になる症状があるときは迷わずご受診ください。精密検査が必要な場合も、妊娠、授乳中の状態に応じて検査を行うことができますのでご安心ください。
- がん検診で「精密検査を受けてください」と言われました。どのような検査をするのでしょうか?
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検診では、マンモグラフィや超音波検査などの画像検査や触診が行われていることが多く、そのいずれかで異常があった場合に詳しく調べるための精密検査が勧められます。
精密検査では、検診で行った検査の状況に合わせて更に必要な画像検査を組み立てて、場合によっては検診と同じ検査をもう一度行うこともあります。それぞれの画像検査をばらばらで行うより、それぞれの検査の画像を見ながら、もう一方の画像検査を行うことで、より詳しい情報やわずかな病変が確認できることが多いからです。
これらの詳細な画像検査の結果、画像のみで確定診断が難しい場合は、さらに細胞診や組織検査が行われます。これは画像を見ながら乳房に特殊な針を刺して、メスで切ることなく乳房の中から病変の一部を切り取って取り出す方法で、コアニードル生検やマンモトーム生検などがこの精密検査の方法です。通常は麻酔をして十分に痛みをコントロールしながら画像をガイドに安全に行うことができますので、ご安心ください。
乳房の症状について
- 乳房にしこりを見つけました。乳がんでしょうか?
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しこりがあって受診する方のほとんどは、がんではありません。疑いを晴らして安心するためにも、勇気を出して受診してください。
もし、あなたの見つけたしこりががんだったら・・・怖いからと先延ばしにしていたら、せっかくの早期がんも進行がんへ育ってしまうかもしれません。あなたの乳房の中にはびころうとしている小さな悪魔が、数ヵ月後にはあなたの命までも脅かしているかもしれません。乳がんは早期決戦が大切です。 - 胸にしこりができて、組織の検査をしたら線維腺腫と言われました。
これが乳がんに変わることはありますか? -
線維腺腫ががんに変わるということはありません。組織検査などで確実に線維腺腫の診断がつけられていれば、まず心配はないでしょう。
ただし、線維腺腫を始め、いろいろな良性の腫瘍の中にはがんと非常に区別が難しいものもあり、この場合には注意が必要です。この判断に難しい腫瘍の場合は、短期間での再度の受診や詳しい組織検査などが勧められると思いますので、次回の受診時期を守ることが大切です。また、あなたが受診した医療機関での説明について納得できない場合は、ほかの施設を受診するのも一つの方法です。 - 乳房のしこりに気が付いて近くの病院に行きました。触診で「これは切ってみないと分からないので手術しましょう」と言われました。切らないと、がんかどうか診断できないのでしょうか?
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しこりに対してはまず触診を行います。しかし、進行がんの場合ならまだしも、触っただけでそれが何であるか正確には分かりません。その内容を確認するために、マンモグラフィや超音波検査などの画像診断が行われます。こうして、ほとんどのしこりがどういう性質のものなのか評価できます。
画像診断を行っても良性と悪性の判断に迷う場合もあり、このような場合には、しこりに針を刺して細胞を少し抜き採り調べる必要があります。この検査を穿刺吸引細胞診あるいは穿刺組織診(針生検)といいます。最近では針先からより多くの細胞を採取できるように工夫されたものも開発され(マンモトーム生検)、画像でしか察知できない微小な病変を正確に採取し、確認することが可能になりました。したがって、現在は診断のためだけに安易に手術が行われることはほとんどなくなっています。
もし、十分な画像診断や説明がなく診断のためにと手術が勧められた場合は、主治医にもう一度手術の必要性について説明を求めてみること、あるいは別の医師に相談してみることをお勧めします。 - 以前に乳房にしこりができて、切除したことがあります。結果は良性と言われましたが何か気をつけることはありますか?
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良性というのは、がんではなかったということです。腫瘍には悪性腫瘍と良性腫瘍があり、がんは悪性腫瘍です。ただし、良性の中でも、切除したしこりを調べて“異形性”や“過形成”という状態を含んでいる場合は、がんになる危険がやや高くなると言われています。このような場合は、特に医師に勧められた受診間隔を守って定期的に診察を受けることが必要でしょう。ただし、いたずらに恐れる必要はありません。乳がんになる人のほとんどは、以前に良性のしこりの治療を受けたことのない人です。むしろ、定期的に病院へ通うきっかけがあるということは、あなたの乳房が十分にケアされているということなのです。
- 授乳中に胸のしこりに気づきました。お乳がたまっているのでしょうと言われましたが、だんだん大きくなってきたようです。どうすればよいでしょう。
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授乳や搾乳をしてもなくならない部分的なしこりがある場合、あるいは赤く腫れたり熱が出たりする場合は、腫瘍や炎症を伴っていることがありますので、適切な治療や検査を受ける必要があります。
授乳中の乳房は状態が大きく変化します。特に授乳前の乳房は硬くしこり状になっている部分も多く、しこりがわかりにくい状態です。適切な検査を受ければ、授乳中でも乳房の様子を知ることができます。忙しいから、子供がいるからと先延ばしにしないで受診してください。
また、診察前に授乳や搾乳をして、できるだけ乳房の腫りをとってください。 - 授乳中でもないのに、乳首から何か汁のようなものが出てきました。乳がんでしょうか?
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原因としては、乳管内乳頭腫(ミルクの通り道の管にできたポリープのようなもので良性腫瘍)が最も多いのですが、乳がんの可能性もあります。
両側の乳頭からミルクのような分泌があるのは、授乳中でない方でもよく見られます。ただし、片方の乳頭から透明あるいは血液のような分泌がある場合は病気が隠れていることがあります。
また妊娠中には、特に異常がなくても血液の混じった乳汁が出ることがあります。いずれにしても、異常な分泌に気が付いたら、受診することが大切です。 - 乳房が痛みます。炎症性乳がんではないかと心配です。
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炎症性乳がんは、腫れや発赤などの炎症の症状があるにも関わらず、むしろあまり痛みを伴わない場合が多いのが特徴です。
通常の炎症の場合も炎症が広がる前に適切な治療が必要ですし、また乳がんであるか否かを正しく確認するために、まずは受診してください。
乳がんについて
- 乳がんになりやすい人は?
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未婚・高齢出産・肥満・高齢閉経・家族歴など、たくさんの項目があります。これらに当てはまらないから私は大丈夫、ということにはなりませんのでどうぞ誤解しないでください。
そしてもし、あなたにいくつか思い当たるところがあったら、ますますさぼることはできません。毎月の自己検診、そして1年に1回は医療機関での検診を受けてください。受診したときにご自分のリスクファクター(家族歴など)について、主治医と相談してみることもお勧めします。あなたにぴったりのブレストケアの方法や受診間隔を確認できると思います。
自己検診で何か変化を見つけたら、自分であれこれ悩まずに、まず受診してください。クリニックを訪れる方のほとんどはがんでないことが判明し、安心してお帰りいただいています。
- 家族や親せきに乳がんの人がいなければ、乳がんの心配はないのでしょうか?
-
乳がんになった方の75~80%は、家族歴(血縁のある親族に乳がんの人がいること)がありません。家族に乳がんがいないからといって安心はできないのです。
- 母と姉が乳がんになりました。遺伝性乳がんが心配です。検診はどのようにすればいいのでしょうか?
-
ご家族に乳がんや卵巣がんの発症が多くある場合、遺伝性乳がん・卵巣がん症候群(HBOC)といって遺伝子の異常から発症している場合があり、血縁の方は注意が必要です。特に通常の発症より若い年代で乳がん・卵巣がんを発症することが多くなります。
もちろん100%発症するわけではありませんし、大切なのはご自身の健康状態を把握して、発症のリスクを理解し、正しい検診を受けることです。まずは検診を受けてご自身の状況を把握しましょう。そこで今のコンディションや家族歴など、今後のリスクに合わせて検診方法のアドバイスをいたします。遠慮なくご相談ください。
- 乳がんは閉経したらならないのでしょうか?
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乳がんになる方が一番多いのは40代後半から50代前半です。
しかし、20代、80代で乳がんになる方もいますし、日本人の場合は30代の乳がんは決してまれではありません。高齢者の乳がんの罹患も欧米型の環境変化と共に増え始めています。 - 乳房が大きいと乳がんになる危険が高いのでしょうか。
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大きさは関係ありません。
ただし、胸が大きいほど自己検診や触診が難しくなることは事実です。まめに自己検診を行い、ご自分の乳房のコンディションを理解すること、定期的に画像診断を含めた乳がん検診をすることが大切です。 - 乳がんは痛くないと聞きましたが、本当ですか?
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痛みのような存在感で気が付くがんもあります。痛みが周期的でないとか、常に部分的な痛みがあるなど、いつもと違う症状があったら受診されることをお勧めします。乳房の腫りや痛みが周期的にある場合は、女性ホルモンの生理的なサイクルによるものがほとんどです。ただし、痛いしこりはがんではないというわけではありません。
- たくさん子供がいて、全員に授乳をしました。家族にも乳がんがいないし、乳がんにならないと安心しています。
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乳がんになる方の75~80%は、全く家族に乳がんの方がいません。ですから、家族や親せきに乳がんがいないから、私は大丈夫・・・ということはありません。同じように、出産経験、授乳経験についても、これがあれば乳がんにならないということではないことをよく理解してください。乳がんに絶対ならないという人は、女性も男性もだれ一人いないのです。
- 自己検診を毎月1回していたら、乳がんは必ず治る時期に見つかるのでしょうか?
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自己検診だけでは不十分であることを理解してください。
自己検診がご自分の乳房のしこりを見つけるのにとても大切であることは明らかです。何よりご自分の乳房の変化をいち早く気がつくには自己検診しかないでしょう。しかし、しこりとして手に触れない非常に早期の段階であっても、マンモグラフィや超音波検査を行うと、乳房の異常を発見できることがあります。病気が乳房全体に広がっているときでさえも、触っただけでは異常を感じないことがあります。毎月の自己検診に加えて、1年に1回は医療機関での画像診断(マンモグラフィや超音波検査)を加えた乳がん検診を行うことが、早期発見への鍵です。また、自己検診で何か変化を感じたら、乳腺科を受診してください。
- 乳がんはしこりとして手に触れるようになるまで発見できないのでしょうか?
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マンモグラフィや超音波検査を始めとする画像診断で、しこりとして手に触れるようになる前に発見できるようになっています。この場合治る確率も高く、また病変が大変に小さいために、手術で切除する部分も非常に小さくてすむことが多いのです。乳がん検診にこのような画像診断が組み込まれてきたのはそのためです。
- 男性でも乳がんになりますか?
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男性も乳がんになります。ただし、女性ほど多くの方がなるわけではありません。
男性の場合、お乳がはれて痛い、しこりができたというときは、女性化乳房と言われる状態の方がほとんどです。これはホルモンバランスによるもの、血圧や胃の薬などの副作用によるもの、あるいは肺がんなどホルモン環境に影響を与える病気が隠れている場合など。乳がんの場合もありますので、自己判断は禁物です。 - 乳腺症の人はがんになりやすいのでしょうか?
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硬く腫って痛みがあったり、乳房全体にたくさんしこりがあるように触れる状態を総称して乳腺症と呼ばれることが多いですが、特に乳がんになりやすいということはありません。
乳腺症は線維のう胞性変化(fibrocysticchange)と言って、現在は乳房の生理的な変化であるという考え方になっています。ただし、こういう方は触診による診察だけでは小さながんを見つけるのが大変難しいことをよく理解しておくことが大切です。
毎月の自己検診で自分の乳房の状態を知っておくこと、そして、1年に1回は医療施設で画像診断(マンモグラフィや超音波検査)を加えた診察を受けることをお勧めします。
- ピル(経口避妊薬)やホルモン補充療法(HRT)は安全なのでしょうか?
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女性ホルモン、特にエストロゲンは、これに感受性を持った乳がんを育てる作用があると言われています。また、卵巣切除などで女性ホルモンの量が少なくなることで、乳がんのリスクが下がることも知られています。リスクファクターの研究からも、女性ホルモンと乳がんに関連があることは確かでしょう。ただし、薬として女性ホルモンを服用した場合に起きる乳がんに対する影響は、善悪意見が分かれています。まず、ピルについてお答えしましょう。
ピル(経口避妊薬)には、エストロゲンが含まれています。ただし、最近一般的に使われている低容量ピルに含まれるエストロゲンの量は非常に少なく、乳がん発生を促すことはないとされています。
また最近では生理前の乳房のはりが、低容量ピルの服用により軽減する場合もあることが分かってきました。以前、ピルを服用していた人に高率に乳がんの発生があったと報告されたことがありましたが、これは現在の約5倍もの量のエストロゲンがピルに含まれていたときのデータであり、逆に最近の研究では、ピルを飲んでいると乳がんのリスクを下げるとの報告もあります。しかし、その真偽については現在も研究されているところです。
次にホルモン補充療法(HRT)についてです。これは閉経後に不足する女性ホルモンを補うための治療です。この治療の目的は、女性ホルモンの不足により引き起こされる更年期の諸症状の改善や骨粗しょう症の予防にあります。気になる乳がんの危険性ですが、10年以上の長期服用をした方に乳がんの危険が増すと言われています。2002年に米国 WHI(Women’sHealthInitiative)が平均5.2年の追跡調査を行ったところ、特にエストロゲンとプロゲステロン併用によるHRT において、乳がんの発生リスクを1.26倍に上昇させたことが報告されています。日本人女性におけるHRTと乳がんの関係はまだ検討中です。
これら乳がんと女性ホルモンに関与するデータはすべて欧米のもので、残念ながら日本人に関するはっきりとしたデータは今のところありません。
ちなみに、HRTを始めると、マンモグラフィでは乳腺の濃度が増し込み合ってくる様子が観察される場合がよくあります。いずれにしても、HRTなど女性ホルモンを使用する治療を受ける場合は、その必要性と、ご自身のコンディションをよくご理解いただいたうえで上手に治療を受けていく必要があるでしょう。
また、ピル・HRT・不妊治療など女性ホルモンを用いた治療を行う際は、開始前に乳がん検診を受けておくことをお勧めします。服用中も定期的な検診を継続することが大切です。 - 乳がんを予防する方法はありますか?
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残念ながら現在乳がんにならないようにする予防法はありません。
まずはリスクファクターを減らすことを考えましょう。自分でコントロールのできることに焦点を当ててみると、過度の肥満をさける、お酒の飲み過ぎに注意する、また、閉経前後に乳がんになる方が多いことからホルモンバランスの崩れも要注意。毎日ストレスをためずに明るく健やかに暮らす努力は乳がんの予防にも役立つでしょう。そして乳がんで死なないようにするにはどうしたらいいか?
これは私たちの大きなテーマですが、早く見つけて治療すること、すなわち自己検診と乳がん検診受診を定期的に忘れずにすることです。(現在欧米では一部の薬剤が乳がんの発生を抑える効果があるのではないかと研究が進められていますが、まだその結論は出ていません) - 乳がんで亡くなる方が増えていると聞きました。乳がんは治療しても治らないのですか?
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日本では現在11人に1人の方が乳がんになっています。
女性の社会進出やライフスタイルの変化により、乳がんになる方が年々増加しています。アメリカでは女性の8人に1人が乳がんにかかっています。日本は欧米諸国に比べ、乳がんになる方が少ないといわれてきましたが、日本でも女性の社会進出や食生活の変化などにより、乳がんになる方は増加の一途をたどっています。
それでは、乳がんになったらもうおしまいなのでしょうか?そんなことはありません。乳がんは早期発見であれば、90%以上の方ががんに勝つことができるのです。命を脅かすことにはならないのです。乳がんの早期発見の重要性を認識し、国中で乳がん検診に取り組んだアメリカでは、乳がんにかかる方は増えているものの、乳がんで亡くなる方はこの数年で減少しています。それだけ早期発見には意味があります。私たち日本人も、他人事とのんびりはしていられません。定期的な医療機関での画像診断を受けること、そして毎月の自己検診を忘れずに行うことが早期発見のポイントです。手遅れと後悔しないよう、今日から、たった今からあなたのブレストケアをはじめましょう。